5月の大人コース

「かえるの　ごほうび」

木島始　作  梶山俊夫　レイアウト

福音館書店　1,540円（税込）

　東京国立博物館で「国宝 鳥獣戯画」絵巻全巻を公開中。有名なウサギやカエルだけでなく、人間や海外の動物、想像の動物も描いた場面があり、全貌が見られるのは珍しいそうです。

　さて、この絵本は、文字のない絵巻に木島始さんが物語をつけ再構成したものです。「鳥獣戯画」は墨一色で描かれた単純な絵、平安時代の素朴な絵です。しかし、絵本をひろげ、じっくり眺めると、墨は濃くも薄くもなり、ゴツゴツした岩は強く、穏やかな川の流れは柔らかに。動き回る元気な体を太く張りのある線で、柔らかな毛並みはぼかしたりして自由に筆を操り、多彩な表現に引き込まれます。

　墨は消すことができません。一度紙に墨をのせたら描き進むしかない、やり直しできない緊張感の中、表情は可愛らしくユーモラス、体の動きや感情までもが表現されていることに驚かされます。この絵に物語がつくことで、一層生き生きとしてきました。（さつき）